Research Abstract |
雪崩の発生条件に関するデータを蓄積するため,前年度に引き続き,妙高山麓の幕の沢において雪崩発生検知システム,地震計およびビデオカメラを設置しモニタリング観測を行なった。また,降水量,積雪深,気温を1時間間隔で測定し,積雪断面観測も行なった。一方,表層雪崩の発生危険度の目安となる斜面積雪安定度の推定に重要な斜面の密度変化の測定を行なった。目的は,斜面と水平面の積雪密度の違いが降雪の堆積過程あるいはその後の圧密過程のどちらに起因するのかを解明することである。斜面の傾斜角による密度の違いを測定するためには,風や日射の影響を受けずに雪を積もらせること,観測結果を計算によって再現するために,降雪強度が一定で,降雪時間を制御できることが望ましい。そこで,防災科学技術研究所雪氷防災研究センター新庄支所の低温室内に斜面を設置し,人工降雪による積雪の密度を測定した。今回の測定では堆積直後には傾斜角による初期密度の違いはなく,密度の差はその後の圧密過程において生じたことを意味する結果になったが,結論を得るにはさらにデータ数を増やす必要がある。積雪安定度を推定する際,湿雪については含水率の分布も考慮しなくてはならないが,融雪水の挙動は未解明のことが多く,特に融雪水の非一様流下や水みちの形成は重要な問題である。このような融雪水の水平移動を示唆する現象を積雪重量計によって捉えることができた。 2005/06年冬期は記録的な大雪にみまわれた。この豪雪では,積雪初期に低温下で強い降雪が続いて積雪深が急増し,積雪相当水量や全層平均密度,そして積雪の硬度が大きいという特徴がみられた。この中で硬度が増大した要因を解明するために,積雪安定度の推定と同様の手法を用いて密度の推定を行ない,乾雪の圧密による密度の増加によって硬度が増大したことを明らかにした。
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