2005 Fiscal Year Annual Research Report
米国におけるプエルトリコ移民の人種アイデンティティと政治意識に関する研究
Project/Area Number |
17710201
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
阿部 小涼 琉球大学, 法文学部, 助教授 (00292722)
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Keywords | プエルトリコ / 米国 / 移民史 / 人種 / 自己意識 |
Research Abstract |
今年度の研究としては、まずニューヨーク市に向かった20世紀初頭のプエルトリカン移民の概要について、全体状況のなかでの位置づけ、統計的な内容、移民の発生要因、主要な経路、移民先での居住地、就業状況などの具体的史実について把握につとめた。そこからさらに、1930年代からその最盛期までに設置されたプエルトリコ移民局の史料を収集し、分析を試みた。移民局は、米国市民でありながら、国境の「外部」からの移民との競合・差別的まなざしの元に晒されたプエルトリコ移民の就業支援、生活支援などを主たる目的として設置された機関として機能したため、移民の実態状況を把握するうえで重要な史料を残している。なかでも、1917年移行、米国市民でありながら、パスポート以外にそれを証明するための手だてとして導入され、用いられた身元証明書は、米国における移民体験の特異性として注目に値する様々な内容を持っている。このIDカードの発行プロセスと、申請書の内容について中心的に採り上げ、史料に基づいて分析しつつ、社会状況のなかに置き直して批評する。移民局がプロファイルし管理したこのIDカードの申請書には、出身地や女性のばあいには婚姻の記録、米国における保証人、居住地などのデータに加えて、その身体的特徴を記入する欄が設けられ、個々人は自分の肌の色についての自己認識、島と米国における他者認識の齟齬を経験する機会となっていることが注目されるのである。今年度は、編著書で、上記内容について、特に1930年代までの状況を中心に採り上げて分析した論文の執筆のほか、移民局の史料を保管している、ニューヨーク市立大学ハンター校プエルトリコ研究センターを拠点として調査を実施した。
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Research Products
(1 results)