2006 Fiscal Year Annual Research Report
米国におけるプエルトリコ移民の人種アイデンティティと政治意識に関する研究
Project/Area Number |
17710201
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
阿部 小涼 琉球大学, 法文学部, 助教授 (00292722)
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Keywords | プエルトリコ / 米国 / 移民史 / 人種 / 自己意識 |
Research Abstract |
今年度の研究においては、引き続き、ニューヨークに設置されたプエルトリコ移民局の史料と、コミュニティ新聞などのメディア史料の収集分析を試みた。プエルトリコ移民は占領後1917年の法制定によりアメリカ合州国の市民権を付与されていたにもかかわらず、トラブルを避けるという理由から身分証を所持するものがあった。このIDを発行したプエルトリコ移民局が管理した個人史料を手がかりに、プエルトリカンの人種的特徴、経済・生活状況等がどのように調査されたのか、これらのIDを必要としたのはどのような労働条件下にあった人々なのか、解析を行っている。ニューヨークでは、移民局を設置するにあたり、市当局との間にどのような交渉が存在したのか、移民を受け容れる市側の対応や社会問題化のプロセス、ローカルな政治交渉などについての過程も検討している。 さらに、このような移民体験と政治とのかかわりについて検討するため、とくにアフリカ系コミュニティとの接点を、プエルトリカンがどのように経験したのか解明してゆく作業を継続している。具体的には、移民先のニューヨークで遭遇したアフリカ系アメリカ人を人種的対照項として構築されるアイデンティティ形成が、いかなる政治的経験のなかに置かれていたのかをあぶり出す作業である。ひとつの焦点として、黒人史家の間では著名なA・ショーンバーグと好対照な人物として注目される社会運動家・ジャーナリストにして詩人でもあったヘスス・コロンの作品研究を行い、アフリカ系というアイデンティティ形成との関わり、1930年代のハーレム・ルネサンスから60年代の公民権運動など隣接していたアフリカ系アメリカ人コミュニティの機運との関わりなどを考察した。また、もうひとつの焦点として、公民権運動に触発されて結成された組織「ヤング・ローズ」の現在にまで続くコミュニティ運動という視点についても対象を広げ、考察を試みた。
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Research Products
(2 results)