2005 Fiscal Year Annual Research Report
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17720003
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
吉永 和加 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 助教授 (20293996)
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Keywords | 他者 / 共同体 / 情感性 / 責任感情 / 罪責感情 / 絶対的他者としての神 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「責任感情」の解明である。フッサールの他者論を克服するためM.シェーラーやM.アンリが提唱した情感性による他者経験の議論は、依然として有効かつ重要なものである。しかし、彼らの議論は、「愛」や「共感」という自己と他者の一体化の境地を他者経験の最高の段階と見なすため、他者性を喪失させる危険をはらんでいる。それゆえ、本研究は、自己と他者との隔絶を前提としつつ、なおかつ両者を結びつける情感性の典型として「責任感情」を取り上げ、これを存在論に検討し、新たな共同体の構築を目指す。さらに、その感情が根源的な「罪悪感情」と結びつくことを証明し、ポストモダン以降の倫理の可能性を示すことを試みる。 本年度は、このような目的にしたがって、まず『憐憫の情から存在の感情へ-ルソーの感情論-』において、ルソーの感情概念を分析し、他者に対する最初の感情でありかつ共同体形成の第一要因であると考えられた憐憫の情が、どのようにして衰退していったのかを明らかにした。そして、憐憫の情の衰退がルソーの共同体構築の断念といかに関係しているのかを『ルソーにおける二つの共同体について』において検討した。これらルソーの批判的考察により、情感性における自己と他者の関係は、両者の一体化(ルソーの場合「透明な関係」)を希求する限り、挫折に終わることを確認した。 次に、『西洋哲学史入門-6つの主題-』の「第六部 神と人間」を担当し、神と人間の関係を哲学史的にたどった。この執筆においては、まず、人間がキリスト教的世界観を脱して自立性を高めていく過程で、どのようにして哲学の主題が神から自我へ、さらには他者へと展開されていったのかを明らかにした。また、絶対的他者としての神と人間の関係が、現代の他者論、例えばサルトルやレヴィナスの議論にも深く関与していることを示した。さらに、責任の前提となる人間の自由と、根本的な罪責感情の由来を明らかにして、責任感情と罪悪感情の結びつきを考察した。
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Research Products
(3 results)