2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィマラプラバーの翻訳研究によるインド密教教義の最終形態の解明
Project/Area Number |
17720008
|
Research Institution | Shuchiin University |
Principal Investigator |
松本 峰哲 種智院大学, 仏教学部, 専任講師 (40351275)
|
Keywords | カーラチャクラ / ヴィマラプラバー / 本初仏 / インド密教 |
Research Abstract |
研究代表者は、これまで『カーラチャクラ・タントラ』(以下KT)及び、注釈書である『ヴィマラプラバー』のサンスクリットテキストとチベット語訳テキストによる翻訳研究を行ってきた。本年度は特にKTの思想基盤とされる本初仏思想に注目しつつ、翻訳研究を行った。翻訳研究を進める中で、KTにおける本初仏思想が、先行研究において指摘されているほど重要な位置を占めていないのではないかという疑問が生まれた。この点を明らかにする為、本年度は本初仏思想の基本教典であり、KTの成立に大きな影響を与えたとされている『ナーマサンギーティ』(以下NS)にも注目し、この教典の多数の注釈書の内、特にKTの思想に基づいてNSを注釈しているとされる『アムリタカニカー』の翻訳研究を行うためにネパール国立公文書館を訪れ、写本の収集を行った。同時に、NSは現在のネパール仏教においても篤い信仰を集めていることから、ネパール現地において密教僧(ヴァジュラ・アーチャールヤ)から聞き取り調査を行った。その結果、ネパールに於いては、硲は盛んに信仰されているが、KTに関しては殆ど興味を持たれていないことが解った。今後、KTとNSの関係、そしてKTにおける本初仏思想の位置づけについては再考察が必要である。 また昨年度同様、翻訳研究において作成した電子テキストデータは、東京大学東洋文化研究所東洋学情報センターデータベース「Tibetan-Sanskrit構文対照電子辞書eDic」のデータの一部として活用される予定である。
|