2006 Fiscal Year Annual Research Report
日独語における「好まれる言い回し」についての研究:語学教育への応用を目指して
Project/Area Number |
17720086
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大薗 正彦 島根大学, 外国語教育センター, 助教授 (10294357)
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Keywords | ドイツ語 / 日本語 / 対照言語学 / 認知言語学 / 語学教育 |
Research Abstract |
本研究は,「ドイツ語らしさ,日本語らしさ」という問題について,近年の認知言語学の知見を援用しながら,語学教育に資するような基盤研究を進めることを目指すものである。 本年度は,昨年度から引き続き日独の小説を用いたコーパス調査・分析を進めると同時に,新たな試みとして日本の俳句のドイツ語訳も調査の対象に加えた。とりわけ日本語をめぐる近年の認知言語学研究の中で注目されている主観的事態把握という事態把握のされ方が,ドイツ語においてどのように認められ,どの程度定着しているのかという点を中心に考察を進めた。 予想されるとおり,日本語が主観的な事態把握への顕著な傾向を示すのに対し,ドイツ語では客観的な事態把握による言語化が相対的に優勢である。しかしながら,英語との対照においては,ドイツ語の方がやや主観的な事態把握に傾くことを示す状況が見られる場合があった。特に,認識のきっかけを表す従属節(「トンネルを抜けると雪国であった」)に続く主節において,ドイツ語でも事態を認識する主体が言語化されない場合が比較的多く見受けられること,場所の表現において,英語の参照点による指示に対し,ドイツ語では直示的な指示が見受けられることなどが確認できた。今後さらに調査範囲を広げ,調査結果に客観性を持たせる必要がある。 現在はこれまでの研究を博士論文にまとめている段階で,その部分的な要約とも言える論文を認知言語学会の学会誌に発表した。加えて,もう一本俯瞰的な小論を同時に執筆中である。また,語学教育への応用という観点から,今年度所属部局において共同で執筆した初級向けドイツ語教科書において,各課に「言葉の感覚」というコーナーを設け,日本語と発想の異なる表現についてコラム的に解説を加えるという試みを行った。本書については来年度中に出版を目指したいと考えている。
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