2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世日本語資料としてのキリシタン写本・書簡類の研究
Project/Area Number |
17720102
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
川口 敦子 長崎大学, 教育学部, 講師 (40380810)
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Keywords | キリシタン / 国語学 / 日本語 / ローマ字表記 / 中世 / 写本 |
Research Abstract |
2006年9月にアンジェリカ図書館、カサナテンセ図書館、ローマ国立中央図書館、イエズス会ローマ文書館(ARSI)(以上、在ローマ、イタリア)、ヴァチカン図書館(在ヴァチカン市国)でキリシタンの写本・書簡類およびキリシタン版を閲覧、調査した。このうち特に重要と思われる資料30点の複写を収集した。 イエズス会ローマ文書館では、昨年度閲覧した上智大学キリシタン文庫所蔵のARSI Jap.Sin.文書の複写資料では判読が困難だったものについて、現物を調査し、不明だった箇所の解読を行った。また、Jap.Sin.文書の一部の所蔵番号が、現在日本で確認できる目録掲載の所蔵番号と違い、整理・改訂されていることを確認した。 今回ARSIで調査収集した資料のうち、慶長九年九月二十七日付の書簡文(Jap.Sin.33,76r-77v)のローマ字書き日本語の本文を翻刻・翻字し、キリシタン版や他のキリシタン写本類と比較した。この資料は有馬セミナリヨの生徒がイエズス会総長アクアヴィーヴァに宛てた書簡の写しとされている。キリシタン版の規範にほぼ則った表記で書かれており、写本特有の表記は見受けられない。日本の書簡での作法もよく踏まえられていることから、本資料の原本作成者は、有馬セミナリヨの聖母のコングレガシオを代表する立場の人物であろうと推定した。この研究成果は「長崎大学 教育学部紀要 人文科学 No.73」に発表した。 本年度の調査で収集した他の資料の翻刻・調査は現在継続中である。 なお、アンジェリカ図書館では、コリャード『懺悔録』(1632年ローマ刊)が2点所蔵されているのを確認した。この2点の所蔵については日本では未報告と思われ、今後、資料の調査が必要である。
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