2005 Fiscal Year Annual Research Report
中世初期スペインの農村構造と領主制の展開過程をめぐる比較総合研究
Project/Area Number |
17720183
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
足立 孝 弘前大学, 人文学部, 講師 (90377763)
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Keywords | 西洋史 / 中世西欧 / スペイン / 農村史 / 領主制 |
Research Abstract |
本年度は,国内外で史料の蒐集とデータベース化を進めながら,これに基づいた個別地域の専門研究と,比較・総合の準備段階として中世初期スペイン農村史の研究動向の整理を行った。具体的な成果は下記のとおりである。 1.中世西欧封建社会の基礎細胞をなす城主支配圏(シャテルニー)の本格的な形成が古代的社会構造から中世的社会構造への最大の転換点にあたるとされる紀元千年頃の社会変動に帰せられるのが通例であるなかで,スペインの北東部リバゴルサ地方に伝来する文書史料を実証的素材として,城塞を軸とする空間組織の編成が,同地域では紀元千年頃を待たずして比較的早期に芽吹いていたことを具体的に明らかにし,紀元千年頃のシャテルニー形成,さらには城塞化現象(インカステラメント)がいずれも長期的な変動課程の最終局面に相当するものと結論した。 2.アラゴン以西のスペイン北西部研究と,カタルーニャ以東のスペイン北東部および南フランス研究とでは,中世初期の社会構造,わけてもローマ=西ゴート的国家統治機構の存続をめぐる理解にきわめて大きな懸隔がある。すなわち,前者では公的な国家統治機構の存在を認めないために封建社会の形成をより早期に位置づけるのに対して,後者ではその存続を長く見積もることで紀元千年以降の急激な封建化を想定しており,互いに実態論と系譜論が整除されないまま絡み合った状態となっている。本年度は,これらの問題点を個別地域研究ごとに具体的に整理したうえで,比較・総合の参照軸となりうるような発展モデルの構築を模索する機会を得た。
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Research Products
(2 results)