2005 Fiscal Year Annual Research Report
フランク時代の支配者文書についての史料類型論的研究
Project/Area Number |
17720185
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加納 修 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 講師 (90376517)
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Keywords | 西洋史 / フランク王国 / 国王文書 / 史料類型 / 文書形式 |
Research Abstract |
本年度はフランク国王の発給した文書の収集・分類作業を行った。収集作業としては、フランク時代の国王文書の原本を数多く保管するフランス国立古文書館に赴き、必要な文書の写しを取るとともに、文書の体裁や書体、さらに印章の形態などについて調査を行った。 国王文書の分類作業については、最近出版されたメロヴィング朝の国王文書集を主たる基盤にして、最初に伝来文書と滅失文書とに分けて分類作業を進めた。伝来文書については、発給者(国王)、日付、発給場所、受給者、法的内容、文書の名称に加えて、文書形式(料紙、フォーマット、王の署名の有無など)を基準として分類を行った。滅失文書についても、明らかにならない文書形式を除いて、基本的に同じ基準を設定して分類を行った。カロリング期の国王文書についても分類作業を進め、9世紀初頭までに発給された国王文書を調査した。本年度はおよそ800点の文書についてデータベースを作成することができた。 文書の分類作業を進める中で、いくつかの事実が明らかになった。第一に、滅失文書から得られるデータと伝来文書から得られるデータとの共通点と相違である。たとえば文書受給者の地理的な分布は広く一致しているが、伝来する文書の種類と、伝来しないが実際に作成された文書の種類は異なる。こうした共通点や相違が意味するところについては、現在分析を進めている。 もう一つの成果は、国王文書の法的意義の問題に関わる。分類作業で得られた所見を考慮に入れながら、証明手段としての国王文書の意義を検討し直した結果、国王文書が相対的な価値しか有していないことが明らかになった。この点については、平成17年12月18日に名古屋西洋中世史研究会(於名古屋大学)で、「宣誓と書証-フランク時代の法文化の性格に関する一考察-」と題して研究成果を報告した。
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