2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730061
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
嶋 拓哉 信州大学, 大学院・法曹法務研究科, 助教授 (80377613)
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Keywords | ファイナリティ概念の多義性 / 当事者間完結性 / 米国統一商法典(UCC) / BISコア・プリンシプル / 日中ファイナリティ / 中央銀行マネー / エッセンシャル・ファシリティ原則 / 透明性の確保 |
Research Abstract |
一般にファイナリティ概念は「決済が無条件かつ取消不能となり、最終的に完了した状態」を指すが、本研究においては、これを一歩進めて、米国統一商法典(UCC)第4編A、欧州連合ファイナリティ指令および国際決済銀行(BIS)のコア・プリンシプルを踏まえ、ファイナリティ概念が決済に関連して当事者間完結性と第三者間完結性という異なる意味を有する多義的な概念であると整理した。このうち、前者の当事者間完結性としてのファイナリティ概念は、銀行間資金決済システムの改革において重要な役割を果たしてきたと位置付けられる。とりわけCHIPS、CLS銀行、カナダのLVTS等の資金決済システムでは、参加銀行間の資金決済におけるファイナリティ付与を可能な限り日中の早い時間に実現させる(日中ファイナリティの実現)ため、中央銀行マネーを活用した制度改革を実施に移してきたが、こうした改革の動きこそが「支払」や「弁済」等の一般的な用語とは別に、敢えてファイナリティ概念を導入した実際的な成果であると結論付けられる。 また、これら資金決済システムにおいて、中央銀行マネーは実際の資金受渡(支払)より前の時点でファイナリティの付与を実現させるために必要な決済手段と位置付けられる。中央銀行が提供する資金決済サービスは市場支配力や垂直的統合力の観点からみて卓越しており、銀行間資金決済において唯一無二にして特別なネットワークであると評価し得ることから、中央銀行マネーへのアクセスについては、独占禁止法上のエッセンシャル・ファシリティ原則との関係が問題となる。このため、中央銀行資金決済サービスの提供に際しては透明性の確保が重要であり、具体的には、サービス提供対象者の選定基準や取引内容・条件について、中央銀行自らが制定のうえ公表するか、あるいは法令に基づく規制として国が制定することにより、十分な明確化を図る必要があると考えられる。
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Research Products
(2 results)