2005 Fiscal Year Annual Research Report
人的資本形成における公教育と私教育の役割と、そのマクロ経済学的含意
Project/Area Number |
17730132
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 隆一 大阪大学, 社会経済研究所, 講師 (00397704)
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Keywords | 人的資本蓄積 / 教育制度 |
Research Abstract |
今年度の研究は以下の二つのテーマに焦点を当てたものであった。 一つ目のテーマは、公教育と私教育の混在する経済における最適な教育政策、教育改革の分析であった。特に、最適な教育政策を考える際に、労働市場における労働者間の補完性と教育システムの相互連関にも着目した。具体的なアプローチとしては、日本の現状に合致する動学的政治経済モデルを構築し、能力によるクラス分けや、私教育の普及が、経済の所得分配に及ぼす影響を理論的に解明した。この研究は、大阪大学大学院国際公共政策大学院の瀧井克也助教授との共同研究であり、今年度は瀧井氏が在外研究で米国に滞在していたため、私が渡米することで共同研究を押し進めることができた。共同で執筆した論文は、神戸大学、名古屋市立大学、同志社大学、京都大学で開催されたワークショップで報告された。現在この共同論文は学術雑誌への投稿のための最終チェックの段階にあり、来年度早々には投稿する予定である。 二つ目は、日本における親子間の人的資本伝播メカニズムを、親の性別や子供の性別を明示的に考慮しながら実証的に分析した。今年度は特に、親の抱く子どもに対する期待の格差が、子どもの学歴格差をどれだけ説明しうるかという点に焦点を当てた。この研究は未完成であるが、暫定的な結果として、期待格差が学歴格差を統計的に有意に説明しうることが分かった。この暫定的成果は、すでに二つのコンファレンスにおいて報告されている。 また、家庭内における人的資本伝播メカニズムの国際比較のための準備も進めた。具体的には、ヨーロッパにおける家計調査の利用可能性を調査するため、スペインのPompeu Fabra大学を訪問し、複数の研究者より情報を収集することができた。
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