2005 Fiscal Year Annual Research Report
産業集積の形成と発展過程-児島縫製業産地の事例研究-
Project/Area Number |
17730176
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
山村 英司 西南学院大学, 経済学部, 助教授 (20368971)
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Keywords | 産業集積 / 産業発展 / 経済発展 / フィールド調査 / 縫製業 / 実証分析 |
Research Abstract |
本研究では児島縫製業産地の長期的変遷を観察する。対象とする期間は、1968年から現在に至るまでである。2004年の7月には児島縫製業産地の概観を把握するための第一次予備調査を実施した。これに引き続いて2005年8月から9月にかけて、分析の基礎となる知識を得るために、調査票のプレテスト(第二次予備調査)、第一次、第二次本調査を実施した。 調査によれば、縫製業の取引関係においては数千万円の契約を交わすときにも、正式な契約書を書くことはなかったという。取引関係から得られる長期的な利益を考慮した場合、短期的な利益追求のために機会主義的な行動をとるより、契約を履行するほうが合理的である。事前に予測されるあらゆる状況を詳細に想定して交わされる書面契約ではなく、取引開始後に起きた状況によって事後的に柔軟に対応するrelational contractは長期的に継続してきた閉ざされた取引関係において機能するのである。とりわけ慣習的な商習慣は伝統的な服種である学生服で強く、ジーンズや女子オフィスウェアなどの新しい業界では弱かった。 昭和40年代はまだ備蓄が可能な詰め入、セーラー服のような定番商品が学生制服の主流であった。これに比べ、昭和50年代後半から各学校がオリジナル制服を採用するようになると、納期までに制服の生産を完了させることが厳しい状況になった。これに伴って、生産に要求される技能も変化する。単品種大量生産の頃は、それぞれの労働者を1つの工程に特化することによって生産の効率性を高めた。多品種少量生産になると、多様なデザインへ対応するために、より高性能の機械設備が重要になる。これと並行して取引期間の長さが変化した。このような生産システムと取引関係がどのように関わっているかを厳密に分析するのが今後の課題といえよう。
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Research Products
(2 results)