2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会的排除から抵抗へ-フランスにおける不安定就労層の争議に関する研究
Project/Area Number |
17730300
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
稲葉 奈々子 茨城大学, 人文学部, 助教授 (40302335)
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Keywords | 都市底辺層 / 不安定就労 / 移民 / フランス / EU / 社会運動 / 争議 / 社会的排除 |
Research Abstract |
2005年9月のフランスにおける社会調査では、不安定就労層のうちとくに移住労働者について聞き取り調査を行った。移住者自身の団体として、在留資格の正規化を求める「第9集団」、支援組織として「人権連盟」、「ドロワ・ドヴァン」、「住宅への権利運動」、「ヨーロッパ行進」、関係する弁護士などに不安定就労層の組織化について聞き取り調査を行うとともに、資料収集を行った。また女性の都市底辺労働の代表的な職業であるホテルの清掃業の労働組合について聞き取り調査と参与観察をおこなった。 アルジェ.リアにおいて、フランスへの出稼ぎ労働者によるかつてのフランスの植民地支配下での独立運動と結びついた労働運動についての資料収集を行った。 2005年12月〜2006年1月のマリにおける社会調査ではフランスへの出稼ぎ者の社会的背景の調査のために帰還した移民および現在出稼ぎしている労働者の家族に対して聞き取り調査を行った。 これらの社会調査からフランスにおける不安定就労層は1990年代以降、都市底辺層に集中しており、労働組合による組織化よりも、当事者による自助組織や1990年代に新しく生起した運動による組織化が進んでいることが明らかになった。都市雑業の担い手が新しい形態の運動に参加する一方で、都市郊外の若者もまた不安定就労層を形成しているが、これら若年層の組織化は未発達のままである。2005年12月の都市暴動はこうした不安定就労層が担い手とされており、異議申し立ての一形態として捉えるための不安定就労層の集合行為の論理については今後の理論的課題である。
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Research Products
(15 results)