2006 Fiscal Year Annual Research Report
遠距離介護を可能にする地域ケアシステムについての研究
Project/Area Number |
17730311
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鍋山 祥子 山口大学, 経済学部, 助教授 (00335762)
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Keywords | 遠距離介護 / 別居子 / ワーク・ライフ・バランス / 地域福祉 |
Research Abstract |
別居子による老親ケアの実態と地域ケア体制との関連を明らかにするために平成17年度に実施した質問紙調査のデータ分析をおこなった。その結果、別居子の抱える問題として、日頃生活をともにしていないがゆえに、老親の体調の変化や日常生活の様子を把握できないことへの不安と、同時に、突発的な老親の心身状況の変化に対応できないことへの不安の大きさが明らかになった。しかしその一方で、不安を解消する拠り所としての選択肢は少なく、地域にある福祉資源(近隣住民や福祉サービスなど)よりも血縁(老親の近くに住むきょうだいなど)に頼っているという実態がみえてきた。また、将来、老親の介護が必要になったときの対応として、遠距離介護を選択するか否かについては別居子のきょうだい関係が影響を与えていることがわかった。これは、要介護高齢者の身体介護を丸抱えできないという遠距離介護の特質ゆえに、自分の他に老親のケアに携わることのできる担い手が確保できる場合に、遠距離介護が選択される傾向にあると指摘できる。この質問紙調査の結果から、これまで別居子による老親支援という視点をとりいれてこなかった地域福祉のあり方を問い直し、遠距離介護を支援することは、高齢者にとっては「生活の質(Quality of Life)」の向上につながり、地域福祉にとっては地域の枠を越えた福祉資源の掘り起こしになるという指摘をおこなった。 さらに、実際に遠距離介護を実践する8名の別居子に対して、2006年10月中旬から11月上旬にかけて合計約16時間に及ぶ聞き取り調査を実施した。そのなかで、別居子が遠距離介護を実践するに至る経緯及び、仕事と遠距離介護との両立に焦点を絞ってインタビューをおこなった。また、遠距離介護を支援する日本で唯一のNPO法人への聞き取り調査も実施し、設立の経緯及びサービスの実施について明らかにした。
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Research Products
(3 results)