2005 Fiscal Year Annual Research Report
地方自治体の財政再建に関わる意同決定システムの体系的な社会学的分析
Project/Area Number |
17730315
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Research Institution | Aomori University |
Principal Investigator |
湯浅 陽一 青森大学, 社会学部社会学科, 講師 (80382571)
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Keywords | 財政再建 / 中範囲のシステム理論 / 政策公共圏 |
Research Abstract |
本研究は、地方自治体の財政再建に関わる意思決定のあり方を、中範囲のシステム理論と政策公共圏という社会学的視点によって考察することを目的としている。研究初年度は、福島県赤池町・方城町・金田町・香春町と、東京都杉並区・埼玉県志木市を対象に、ヒアリングと資料収集を中心とした現地調査を行い、合わせて、財政学をはじめとする隣接領域における文献研究を行った。 本年度の研究から、現段階において明らかにされた主な知見は以下のとおりである。財政再建団体を経験した福岡県内の4町を対象とした調査では、各町とも、(1)投資的経費の増大により財政状態の悪化が進行したこと、(2)再建計画の内容は投資的経費の圧縮と職員削減による人件費の抑制を柱としていること、また、(3)いずれの町も計画を前倒しする形で再建を終えているが、その主たる要因が好景気を背景した税収の増加にあることなどの点において共通点が見出された。その一方において相違点としては、香春町において町議会が、とりわけ再建団体終了後の町の財政状態を良好なままに保つにあたり重要な役割を果たしていると思われることが見出された。 杉並区と志木市を対象とした調査では、(1)都市部の市区町村自治体においては、環境に関わる地方目的税を創設するための課税基準が乏しいこと、(2)財政再建にあたっては、福祉関連分野の住民負担の増加や行政の業務に住民の参加を取り入れることが鍵となることなどが見出された。 関連分野の文献研究からは、とくに、都市部と地方とで財政悪化の要因が異なるという点が重要であることが理解された。 今年度の調査は、主として行政関係者を対象としている。上記の知見を展開させていくためには、次年度以降、議会関係者や関係住民へのヒアリングを進めていくことが課題である。
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