2006 Fiscal Year Annual Research Report
地方自治体の財政再建に関わる意同決定システムの体系的な社会学的分析
Project/Area Number |
17730315
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
湯浅 陽一 関東学院大学, 文学部, 講師 (80382571)
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Keywords | 財政再建 / 意思決定システム / 中範囲のシステム理論 / 政策公共圏 / 財政社会学 |
Research Abstract |
18年度は、1本の研究論文の執筆と2度の現地調査を中心とした研究活動を行った。研究論文(「財政再建団体と地域における社会システム-福岡県田川地域を事例として-」)では、17年度の調査結果を踏まえ、財政再建団体を経験した自治体の地域社会の状況や再建をめぐる経緯、再建計画の内容などをまとめたうえで、財政再建制度の長所と短所、財政再建団体入りすることが地域社会に対して与えた影響などについて検討した。財政再建団体となった自治体では、国の管理下にあるという事情により地域社会内の諸主体からの予算獲得要求が抑制され、それによって再建が成功した。しかし、財政再建団体を経験することは財政破綻を生んだ地域の社会システムを変革するものではなく、その効果は一時的なものでしかないということが明らかとなった。 現地調査は、第1回を8月28日から9月1日までの日程で福岡県田川地域において実施し、第2回を2月19日から23日までの日程で福島県の県南地域を中心として実施した。第1回の調査では、17年度の調査に引き続き、財政再建団体を経験した自治体の住民や関係者、および財政再建団体を経験していない近隣の自治体の関係者に対する聴き取り調査を実施した。第2回の調査では、財政破綻の危機に瀕しながらも自主的に再建しつつある自治体や、市町村合併を選択しないことを背景に積極的に行財政改革を進めている自治体の関係者などへの聴き取り調査を行った。これらの調査の結果は現在、集約中であるが、これまでのところ、(1)開発型か改革型かという首長のリーダーシップのあり方、(2)翼賛型か対抗型かという首長と議会との関係性、(3)会計監査が十分な機能を果たしているか、などの点が、自治体の財政状況に大きく影響するのではないかという知見を得ている。
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