Research Abstract |
本研究は小学校への移行期における自己概念の発達を捉えるために,横断研究と縦断研究を組み合わせ,幼稚園5歳児,小学校1年生,2年生の3学年を対象に,2年間にわたり縦断追跡的に自己理解インタビューを行い,(1)子どもの自己描出の量的・質的分析に基づき横断的に把捉された平均的な発達パターンと,縦断追跡的に捉えられた個人内の連続性と変化のパターンの差異を明らかにすること,(2)年齢要因と小学校へ移行という環境要因が自己発達の連続性に及ぼす影響を検討することが目的である。ただし2005年度は,縦断的調査の1年目であるため,横断的変化のみ検討した。インタビュー調査は,2006年1月〜3月に,都内の公立小学校2校,公立幼稚園2校で行った。対象児は,幼稚園5歳児クラス53名,小学校1年生59名,2年生68名,計180名である。インタビュー内容は,I 現在の自分(いいところ等),II 1学年前の自分(どんな子だったか,どんなところが変化したか等),III 1学年後の自分(どんな子になっているか,どんなところが変化するか等)についてである。1学年前から現在への変化や1学年後への変化に関する質問への回答に着目し,自己の成長という点から結果をまとめてみると,5歳児は,身体的発達(背が高くなる等)や具体的な行動の変化(遊びが変わる等)を述べることが多く,また小学校へ進学することを非常に肯定的に捉えていた。1年生は,身体的変化と具体的能力の変化(絵がうまくなる等)に言及することが多く,また現在は苦手なことでも,成長することで不得意を克服できるというように,将来を明るく捉えていることがわかった。2年生でも1年生と同様に,変化を具体的な能力が増加することとして肯定的に捉えていた。以上の結果は,幼児期と児童期前期の自己概念の特徴と一致しており,また一貫して自己の変化を肯定的に捉えていることが明らかになった。
|