2006 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄県における障がい児の学校体育への参加の現状及びその重要性について
Project/Area Number |
17730522
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
永浜 明子 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (70382455)
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Keywords | 障がい / 体育 / 統合体育 / 統合教育 / 運動 / 教育 |
Research Abstract |
【目的】障がいのある児童生徒が見学や得点付けではない形での参加を阻害する要因を体育担当教員へのインタビューから明らかにすることを目的とした.また、障がいのある児童生徒と障がいのない児童生徒が共に体育の授業に参加することが双方にとって重要であることを検証し,積極的に参加できるための工夫や方策を検討することも目的とした. 【対象と方法】沖縄県那覇市内の小中学校各1クラスの児童生徒,体育担当教員,ヘルパー,中学生の障がいのある生徒本人及び障がいのある児童生徒の保護者を対象とした.実施体育担当者と本研究者合同での「体育」授業実践前後に意識調査を行った.体育担当者,ヘルパー,及び保護者に対しては,前後にインタビューを実施した.児童生徒に対しては,実施前にインタビュー,実施後は記述式で気持ちを表現する手法をとった.分析は,質的記述的分析手法を用いて,阻害要因及び障がいのある児童生徒と共に行う体育に関する子どもの気持ちをまとめた.調査実施期間は,平成18年4月〜10月であった. 【結果と考察】合同授業実施前の児童生徒へのインタビュー結果から,小学生30人全てが「障がいのある友人と共に体育の授業を受けたい」と答えたが,中学生では,「一緒に受けたい」と答えた生徒が約半数(15人),「できることをすればいい」と答えた生徒が約3分の1であった.しかし,全児並生徒のほとんどが,「もし自分だったら嫌だ」「一人になった気がする」という気持ちを表現した.障がいのある児童生徒に適したルールをクラス全体で考え実施した授業の後には,小学生では「みんなでやると楽しい」「自分もボールをいっぱい触れた」などの意見が多く,中学生では「(車椅子で)バスケットができることにびっくりした」「最初は楽しくないと思ったけど楽しくなった」「Aが楽しそうだからいい」という意見が多かった.小学生では,障がいのある児童に適したルールが体育の苦手な児童の有意義な参加にもつながること,中学生では,障がいのある生徒への認識の変化や思いやりの気持ちの芽生えが明らかとなった.体育担当教員へのインタビューの結果から,「教員が障がいのある児童生徒に対する身体活動の教育を受けていないこと」「人員の不足」「金銭面での困難」が障がいのある児童生徒の有意義な体育への参加を阻害する要因であることが明らかとなった.また,中学校の教員からは障がいのある生徒の笑顔とスピードを制限しなければならない障がいのない生徒のストレスのジレンマがあるという意見も聞かれた.これらの結果を踏まえ,小学校と中学校の統合体育のあり方が異なりそれぞれにあった計画やプログラムが必要であることも明らかとなった.
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