2005 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の左右軸形成を引き起こす遺伝子発現パターンダイナミクスの数理モデル
Project/Area Number |
17740058
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中口 悦史 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 助手 (70304011)
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Keywords | 応用数学 / モデル化 / 発現制御 / 反応拡散系 / 数理生物学 |
Research Abstract |
本年度は,本研究課題開始以前より継続している,マウス胚の発生初期段階における左右非対称な発現パターンを示す遺伝子プロセスの数理モデル化に関する,本学生命機能研究科・濱田博司教授らとの共同研究の精密化から始めた.プロセスを遺伝子とシグナル蛋白質の発現調節関係およびシグナル蛋白質の拡散によってモデル化し,偏微分方程式と常微分方程式を組み合わせて定式化した.モデルのパラメータの調節を行い,シミュレーションプログラムを作成して,正常胚およびいくつかの既知の遺伝子変異胚における発現パターンの再現を試みた,さらに未知あるいは実験において設定困難な遺伝子操作胚における発現パターンの予測について検討した.この成果は雑誌論文によって公表予定であるが,まだ執筆中のため投稿に至っていない. 遺伝子プロセスの数理モデルとその数理解析に関する情報収集・交換のために,いくつかの学会や研究集会に出席し,さまざまな研究者と意見交換を行った.特に基礎生物学研究所・望月敦史助教授や宇部工業高等専門学校・大崎浩一助教授とは,数理生物学分野における反応拡散方程式系の数理解析について,相互訪問あるいは学会や研究集会の際にそれぞれ年度中に2〜3回の意見交換を行うことができた.上記共同研究で構築した数理モデルも反応拡散方程式系に分類することができるので,この意見交換は来年度以降の研究のために非常に有用であったと考えている.次年度以降,左右軸形成の遺伝子プロセスの特徴的な部分を抽出し,単純化,抽象化した数理モデルについて,数理解析を行い,その生物学的な意義について考察する予定である. 関連するテーマとして,パターン形成の数理解析の手法として近年注目されている,反応拡散方程式系による非線形力学系のアトラクタに対する評価について,ドイツ・ミュンヘン工科大学・M.Efendiev教授や前出の大暗助教授らとの共同研究により,いくつかの知見を得ることができた.この成果についても論文を準備中である.
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