2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 岳 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 研究拠点形成特任研究員 (00396847)
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Keywords | 反応拡散方程式 / 特異極限 / 平均曲率流方程式 / 界面現象 / 粘性解 |
Research Abstract |
多重井戸型ポテンシャルによるアレン・カーン型方程式の内部遷移層の挙動について研究した。 アレン・カーン方程式は物質がある領域で2つの状態に相分離しているときの界面の様子を表す。解は秩序変数と呼ばれ、物質の状態をその値で表している。解の値が大きく変化する部分を内部遷移層と呼ぶ。アレン・カーン方程式ではこの内部遷移層が、平均曲率流方程式にしたがって動く界面の運動を近似していることが知られている。一方多重井戸型ポテンシャルによるアレン・カーン型方程式の解が表す物質の状態は一般に2つ以上存在し、したがって複数の内部遷移層が得られることが予想される。その内部遷移層の挙動について研究した結果、多重井戸型ポテンシャルの導関数が周期的ならば、無数に得られる内部遷移層のそれぞれが同一の駆動力項付きの平均曲率流方程式にしたがって運動する界面を近似していることが得られた。 証明は、進行波解と呼ばれる特殊な解と解の比較原理を用いた解の評価による。進行波解とは直線状の内部遷移層が運動する様子を表す解である。これと界面からの距離関数を用いてアレン・カーン方程式の優解および劣解を構成し、解を評価する。しかし、多重井戸型ポテンシャルによるアレン・カーン型方程式の解の評価では通常得られる進行波解の2倍以上の値の変動をもつ進行波解が必要であり、一般にそれは得られない。そこで本研究では通常の進行波解を複数個積み上げ、粘性解と呼ばれる弱解の概念がもつ性質を用いることによって通常の2倍以上の値の変動をもつ新たな優解および劣解を構成した。 この結果は結晶のスパイラル成長を表す数理モデルの研究において、小林亮氏が提案した反応拡散方程式によるモデルと本研究代表者が提案した等高線方程式モデルの関係を示す際に重要な約割りを果たすと考えられる。
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Research Products
(2 results)