2005 Fiscal Year Annual Research Report
自由境界を伴う非線形現象を記述する力学系の大域的安定性の研究
Project/Area Number |
17740099
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
白川 健 神戸大学, 工学部, 講師 (50349809)
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Keywords | 自由境界 / 形状記憶合金 / 固体・液体相転移現象 / ギブス・トムソン則 / 安定性解析 / アトラクター / 定常解の幾何学的特徴 / 表面張力係数 |
Research Abstract |
本年度では、自由境界を伴う非線形現象の代表例である相転移現象に的を絞り、数学モデルが生成する力学系に対する安定性解析を行った。扱った数学モデルは、いずれも温度変化と相変化を記述する2つの方程式で構成される。具体的な研究内容は次の3つに要約される。 1.M.フレモンド氏(フランス)が提唱した形状記憶合金の数学モデルを題材に取り上げ、力学系の安定性をアトラクターと呼ばれる集合を用いて特徴付けた。同じテーマでは空間1次元のケースの結果が既に報告されているが、ここではこの先行結果を空間3次元のケースへ拡張した。 2.自由境界上の表面張力の効果を記述する「ギブス・トムソン則」に基づいた固体・液体相転移現象の数学モデルを扱った。温度が既知(定数)ならば、定常解の幾何学的特徴を捉えた研究報告が幾つかあるが、本年度ではこの仮定を外し、空間2次元の定常解に対する安定性解析を行った。その結果、数学モデルの定常解の安定性を自由境界上の曲率を用いて特徴づけし、ギブス・トムソン則で主張される表面張力の効果が再現されている事を確認した。しかしこの数学モデルには、熱流に時間平滑化の項を組み入れるなど、物理的に不自然な部分も含まれている。このような人工的な要素を取り除いた設定での結果はまだ得られておらず、次年度以降の課題として残されている。 3.ギブス・トムソン則をベースに、物質固有の特性を反映する枠組みでの安定性解析にも着手した。その第一歩として、正の定数とされていた表面張力係数を空間変数に依存させ、エネルギー密度に偏りを持たせた新しい数学モデルを構築した。結果として、表面張力係数の表現が定常パターンの形状決定に大きく寄与する事を具体的な形で示した。しかし、この結果は物質の異方性などをカバーするにはまだ不十分であり、過渡的な段階の報告である。次年度以降もこの目標に沿った活動を継続したい。
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Research Products
(3 results)