2005 Fiscal Year Annual Research Report
彗星氷の重水素/水素比およびオルソ/パラ比から探る太陽系形成初期の温度環境
Project/Area Number |
17740119
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
河北 秀世 京都産業大学, 理学部, 講師 (70356129)
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Keywords | 太陽系 / 彗星 / Deep Impact |
Research Abstract |
本年度は、9P/Tempel 1彗星の探査計画(NASA/Deep Impact)の地上支援観測等を実施した。Deep Impactのハイライトである、探査子機の彗星核衝突時の放出物探査において、ハワイ島に設置された世界最大級の望遠鏡であるKeck望遠鏡および日本のSubaru望遠鏡を用いた観測を行った。これにより、カイパーベルトに起源を持つと考えられている9P/Tempel 1彗星が、別起源であるオールト雲彗星と非常に似通った性質を有していることが判明した。また、衝突前に観測されていたガスの組成比やシリケート塵の結晶度などは、内部からの噴出物とは異なっており(つまり、従来の観測では、起源によって組成等に違いが見られた)、周期が短い彗星において彗星核表面が太陽熱の影響を受けてしまっている可能性を示唆している。また、これと同時に、従来は力学的に異なる起源を有すると思われていた二つの種類の彗星が、同じような場所から誕生した可能性も示唆されている。 また、そのほか、彗星中に観測された氷粒子の温度や結晶度を詳細に検討し、その起源を議論した。この彗星はC/2002 T7であり、やはり、Subaru望遠鏡によって観測されたものである。観測データからは、氷粒子が完全にアモルファスであるという確証は得られなかった。結晶質である可能性も残っており、その場合には、温度が約140Kであったと言える。これは、宇宙空間で彗星氷が蒸発しつつあることを意味している。 その他、C/2001 Q4彗星において、水、アンモニア、メタンの各分子について原子核スピン温度を決定し、それらが良い一致を示すことを報告した。これは、こうした分子が低温度の塵表面で形成された可能性を示唆している。
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Research Products
(6 results)