2005 Fiscal Year Annual Research Report
レーザーを用いた大強度ハドロンビームの高精度電流・電位分布計測法の開発
Project/Area Number |
17740178
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
李 成洙 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助手 (20353360)
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Keywords | 加速器 / 高性能レーザー / 素粒子実験 / 実験核物理 / ビーム物理 |
Research Abstract |
本研究課題では、KEK陽子加速器の負水素イオンビームにYAGレーザーを照射し、ビーム強度分布と電位構造を直接計測する事を目標に定め、研究を実施した。その結果、非常に明確なビーム中性化データを取得し、極めて信頼性の高い測定手法を確立することに成功した。 負イオンビームはレーザー照射により電子を1つ失い中性化される。本年度では既存の負イオンビーム加速器にYAGレーザー照射系を加えることと、中性化を確認するための電子収集検出器、電流モニター等の開発を行った。機器据付けを予定通り完了し、5mA〜30mAのリニアックビームに対してレーザー照射実験を実施した。はぎ取られた電子はほぼ理論通りの割合と軌道を描き、電子収集検出器で観測された。中性化によるビーム電流の低下は下流側の電流モニターで検証し、実験の健全性をチェックしている。本測定により得られたビーム分布は、相互チェックの為に用意したビーム破壊型のワイヤーセンサーの測定とほぼ一致した。 さらに、電子収集検出器のバイアス電圧をスキャンする事で収集電子の詳細なエネルギー分布を測定することにも成功した。はぎ取られた電子はイオンビームの速度に一致した運動エネルギーを持つが、はぎ取られた場所の空間電位に依存したエネルギー拡がりも持つ。収集電子のエネルギーを詳細に測定することで、ビーム内部の空間電位を直接測定することに世界で初めて成功した。この測定は、1ナノ秒程度の超高速レスポンスを持つ事が確認され、ビーム進行方向の微細なバンチ構造も測定可能である。これらの成果は平成17年度中にビーム計測の国際学会(DIPAC2005)と第2回加速器学会年回において報告した。平成18年度はこれら測定データの整理を進めるとともに計測器の校正作業を行うことで実験精度を上げ、論文として発表する予定である。
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