2006 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブにおける電子状態制御と量子輸送現象の理論
Project/Area Number |
17740184
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴浦 秀勝 北海道大学, 大学院工学研究科, 助教授 (10282683)
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Keywords | カーボンナノチューブ / グラフェン / 電気伝導 / 電子・格子相互作用 / アンダーソン局在 / 磁気抵抗 |
Research Abstract |
外部応力を印加した単層カーボンナノチューブの電気伝導について,強束縛模型に基づき,理論的解析を行った.金属チューブでは,エネルギーバンドの谷構造ひとつあたりのチャネル数が単一の場合と複数の場合で伝導率変化が質的に異なる.前者の場合,その程度は応力の種類とチューブ構造の構造に依存するものの,応力は伝導を抑制する方向に働くが,後者の場合では伝導を増大する可能性があることを明らかにした.ただし,系統的な理解には至らず,継続して研究を続ける予定である.半導体ナノチューブにも無数の構造が存在し光学応答の振る舞いから2つのクラスに分類されているが,応力変形に対する電気伝導の変化もその2つのクラスのどちらに属するかで応答が異なることを明らかにした.また,単一チャネル状態での応力による電気伝導変化は,チューブの構造に関わらず,金属・半導体ともに,仮想的な磁束を印加した際に生じる電子状態変調により理解できることを示した. 過去にグラフェン(2次元単層グラファイト)の量子効果による磁気抵抗が,通常と異なり,正となりうることを予言したが,近年実験による検証が可能となり,磁気抵抗は,はっきりと表れず,変化は非常に小さいことが明らかになってきた.ナノチューブにおける伝導の研究過程で,エネルギー分散の高次補正項が重要な役割を果たす可能性を見出したことから,その効果を考慮しグラフェンの電気伝導率の量子補正項を計算しなおした結果,実験結果と同様,伝導率は磁場にほとんど依存しなくなることを明らかにした.アンダーソン局在のユニバーサリティクラスの観点では,シンプレクティッククラスとオルソゴナルクラスの間のクロスオーバーが,高次分散項の存在がシンプレクティッククラスとユニタリクラス間のクロスオーバーに変化すると解釈できる.
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Research Products
(2 results)