2005 Fiscal Year Annual Research Report
Co系超伝導体母物質Na_XCoO_2の圧力下強磁場ESRによる電荷秩序状態の解明
Project/Area Number |
17740228
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
櫻井 敬博 神戸大学, 研究基盤センター, 助手 (60379477)
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Keywords | 超伝導 / 電荷秩序 / 高圧 / 強磁場 / ESR |
Research Abstract |
本研究は申請者が開発した圧力下強磁場ESRを用いて、Na_<0.5>CoO_2の電荷秩序状態を解明することを目的とする。Na_xCoO_2はCoO_2レイヤーとNaレイヤーが交互に積層する層状化合物である。系はx(Co^<3+>とCo^<4+>の割合)やNaレイヤーへのH_2O分子の挿入によって生ずる、超伝導相を含む多彩な相変化に注目が集まる物質であるが、特にx〜0.5においてのみ特異的に現れる絶縁相(電荷秩序相)の起源を解明することが本系を特徴付ける電子相関を理解する上で重要な鍵となる。今年度は粉末試料による常圧下X-band ESR測定、及び強磁場ESR測定を行い、また圧力下強磁場ESRシステムの改良を行った。常圧下におけるX-band ESR測定では、既に磁化率の温度依存性に見られる90K付近での異常に向かって、温度の低下に伴う吸収線幅の増大が観測され、またそれより低温では極めて非対称な吸収が観測された。これは90K付近での反強磁性転移を示唆しており、また非対称な吸収は反強磁性共鳴の一部を観測している可能性がある。今後は磁場配向を施した試料を用いて角度依存性を調べこの転移の起源を詳細に検討する。強磁場ESR測定では系の抵抗率が比較的低いため、使用する電磁波(ミリ波、サブミリ波)が十分に透過せず共鳴吸収の観測には至っていない。試料を表皮深さ以下に更に微細に粉砕し、また絶縁体マトリックス中に分散させる等して引き続き測定を試みていく。一方圧力下強磁場ESRシステムについては、圧力セルの改良等により発生圧力が1GPaにまで到達した。更にESR専用の圧力較正物質(NiSnCl_6・6H_2O)を見出し、Ni^<2+>(S=1)イオンの一イオン異方性パラメータ(D値)の圧力に伴う変化を利用した圧力較正方法を確立した。
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