2006 Fiscal Year Annual Research Report
角度分解光電子分光によるスピン配列した磁性薄膜における電子状態
Project/Area Number |
17740237
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
伊藤 孝寛 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助教 (50370127)
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Keywords | 強相関電子系 / 光物性 / 磁性 |
Research Abstract |
本研究は、パルス磁場によってスピン配列させた磁性薄膜における高分解能角度分解光電子分光測定により、電子とスピンの相互作用が磁性に果たす役割を、スピン配列による電子状態の変化を通じて直接的に観測する事を目的とする。 磁性薄膜における角度分解光電子分光測定をパルス磁場によってスピン配列した環境下で行うという本研究の目的を実現するために、平成18年度は、分子線ビームエピタキシー(MBE)装置による磁性薄膜作成、および作成した磁性薄膜における角度分解光電子分光測定を行ってきた。また、パルス磁場発生装置、およびカー光学測定系の整備を現在進めている状態にある。以上の現状について、詳細を以下に示す。 1.MBE装置による磁性薄膜作成 典型的強磁性半導体(TC=70K)として知られるEuOの単結晶薄膜の作製に成功した.この系はこれまで多結晶試料において物性測定が多数行われてきたが、物性と電子状態の関わりについては、ほとんど明らかになっていない。今後、Gdをドープした系についても、単結晶磁性薄膜の作製を系統的に行っていく予定である。 2.磁性薄膜における角度分解光電子分光測定 単結晶強磁性薄膜EuOにおいて、放射光角度分解光電子分光を用いた3次元的電子状態の実験決定を行った.その結果、Eu4f電子は伝導電子と強く混成して遍歴バンドを形成している事が明らかになった. 3.パルス磁場発生装置、およびカー光学測定系の整備 作製した試料の磁気物性を真空チャンバー内で評価するために、パルス磁場発生装置およびカー光学測定系の整備をすすめている。前者については、500Vパルス電圧印加装置を作製し、後者については、光学系を真空チャンバーに直接設置するためのステージを設計中である。 平成19年度は、MBE装置により作成した、巨大磁気抵抗を示す磁気薄膜EuOにおいて、(1)スピン配列した磁性薄膜におけるin situ磁化測定、および(2)同様の系におけるin situ角度分解光電子分光測定を順次進めていく予定である。
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