Research Abstract |
1.大気-海洋-波浪結合モデルによる台風直下海面境界物理の解明 昨年度に引き続き,構築した大気-海洋-波浪結合モデルを用いて,台風直下における海面境界で生じる複雑な相互作用の解明のための感度実験を行った.その結果,精度の高い台風強度予測(48時間以内で誤差5hPa以内)のためには,水面から水深50mまでの比較的浅い場所での温度プロファイルを,誤差1℃以内の精度で入力する必要があることが明らかとなった.また,新たに「渦位」を基にした台風ボーガス作成アルゴリズムを開発し,理想的環境場での台風数値実験を可能にした. 2.バランス台風モデルの構築 Emanuel(1989;1995;2004)やBister and Emanuel(2002)を基にして,軸対称円筒座標・傾度風平衡・静力学平衡を仮定したバランス台風モデルを構築した.これは,台風を不可逆的カルノーサイクル熱エンジンと見立てて,海水面温度と対流圏界面温度の差が大きいほど熱効率が高く,仕事量(最大風速)も大きくなるというようなモデル化がなされている.入力値として海水面温度,対流圏界面温度,仮温度プロファイルなどを要し,出力として中心気圧,最大風速,最大風速半径などの重要な台風固有パラメータを得ることができる.ただし,この出力値は可能最大台風強度を示すため,現実の台風強度と比較して過小評価傾向にあることに注意が必要である.本年度は,このバランス台風モデルのコード化を完了し,ECMWF全球再解析データ(ERA40)を入力値とすることで,あらゆる事例に対して台風可能最大強度を評価できるようになった. 3.バランス台風モデルと台風直下海面境界物理モデルの結合 2で構築されたバランス台風モデルに対して,1による知見を踏まえ簡略化した1次元海洋モデル(0〜50m深)を結合させることで,より現実的に台風強度を評価できるようになった.
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