2006 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理的な量子反応速度理論の開発とその酵素触媒反応への応用
Project/Area Number |
17750013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 武志 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (30397583)
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Keywords | 化学反応 / 反応速度 / 量子効果 / 遷移状態理論 / 経路積分 / 酵素反応 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)量子論に基づいた第一原理的な化学反応速度の計算法を開発すること、(2)それを汎用の分子動力学パッケージ(AMBER)に実装し、一般的な化学反応に適用するための土台を作ること、(3)作成した新しい反応速度モジュールを酵素触媒反応に適用し、その計算コストや信頼性を評価すること、の3点である。目的(1)については、これまで線形応答理論に基づいた量子論的な遷移状態理論を提案し、経路積分法で一般的な系に適用する方法を開発してきた。その方法(量子インスタントン法)を、気相中のベンチマーク反応、溶液中のプロトン移動反応などに適用し、現実的な計算コストで信頼性の高い反応速度を得られることを示した。今年度は、その計算で特に必要となる反応性フラックスの減衰時定数をより効率よく計算するための方法を開発した。この量は、従来は熱力学的評価子と呼ばれるものを用いて求めていたが、これを座標のスケーリングによって書き換えることで、ビリアル型の評価子に変換出来る事、またこれによって、経路積分における統計誤差を大きく減らすことが出来る事を示した。次に、目的(2)については、昨年度までに経路積分分子動力学(PIMD)のモジュールと、経験的原子価結合法(EVB)のモジュールを分子動力学パッケージAMBERに実装した。これはAMBER9として既に公開されている。今年度は、目的(1)で述べた反応速度計算のためのモジュールを新たに実装した。そこでは反応に関与する原子の質量を人工的にスケールすることで、自由エネルギー計算を必要とせずに、速度論的同位体効果を経路積分で求める方法などが含まれている。この方法はポテンシャル関数の調和近似を用いておらず、量子論的な遷移状態理論の枠内で厳密である。目的(3)については、上記で作成したモジュールを用いて、現在いくつかの酵素反応について計算中である。
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Research Products
(3 results)