2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17750033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 由佳 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (80334316)
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Keywords | 光学活性Nキラル化合物 / 光学分割 / ヒドロシリル化反応 / 酸性分割剤 |
Research Abstract |
光学活性Nキラル化合物は、生理活性が極めて高く、制ガン剤などの医薬品として有用な骨格である。これまでに用いられてきた光学活性Nキラル化合物は、主に、天然物からの抽出および誘導により得られたものである。それゆえに、窒素原子上のみに不斉中心を有する化合物の合成例は極めて少ない。しかしながら、光学活性Nキラル化合物そのもののキラル識別能を検討するためには、炭素等、他原子の不斉点を含まない純粋な光学活性Nキラル化合物を合成する必要がある。 本研究では、窒素原子を環上に配置し、立体反転を高度に抑制した構造を有するかざぐるま型の分子をデザインした。この分子は、窒素原子以外の不斉点を含まず、さらに、両エナンチオマー間のエネルギーが等しいという特徴を有する。この分子はまず、ラセミ体を合成した後に酸性分割剤により光学分割することにより、活性体を大量に入手する方法について合成を試みた。 本年度は、様々な合成ルートの探索を行った。その結果、安価な原料であるフタルイミドを出発物質として、6段階、全収率19%で目的化合物の前駆体の合成に成功した。現在は、最終生成物のラセミ体を得るために、前駆体の環化について、ヒドロシリル化反応の検討を行っている。また、ラセミ体合成と平行して、Nキラル化合物の光学分割の際に用いる酸性分割剤の検討を行った。第三級アミノ化合物の光学分割は塩基性が弱いために一般に困難とされているが、近年、当グループが開発したキラルチオホスホン酸は、広範なアミンに対して高い分割能を有することが明らかとなり、Nキラル化合物に対する光学分割剤の有力な候補化合物となり得ることを見出した。
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