Research Abstract |
近年,複数の金属中心の協同作用や機能分担を指向した多点認識型,二重活性化型不斉触媒の開発が活発に行われている.本研究では,二種の金属を固定する二核化部位と不斉反応場を制御・増幅する立体的修飾部位とを別途調製し,それらが反応系中で集合する事で二核金属触媒として作用する集合型二核金属触媒の開発を検討している. 今年度は会合種を生成しやすいTiを中心金属とする"集合型二核金属触媒"の開発を主に検討した.ジアルキル亜鉛存在下,Ti触媒によるアルデヒドのアルキル化反応は,アルキル基が亜鉛からTiへとトランスメタル化した後に,二つのTiの共同作用によって進行していることが明らかにされており,興味深い二核Ti触媒も報告されている.このような背景のもと,今年度はトリフェノール,トリオール,イミノジオールを母骨格とする二核化配位子を用いた不斉アルキル化反応について検討を行った.キラル配位子(BINOL,TADDOL),Ti(O^iPr)_4,Et_2Zn及びそれらを集合させる二核化配位子を組み合わせることによって,二核金属触媒を反応系中で調製し,CH_2Cl_2溶媒中,0℃でベンズアルデヒドのアルキル化反応を検討した.イミノジオール二核配位子を添加した場合,二核化配位子を用いない時やトリフェノール,トリオール二核化配位子に比べて良好な収率,エナンチオ選択性が得られた.特にエナンチオ選択性はイミノジオール二核化配位子を添加することで,生成物の絶対配置が逆転することを見出した.またイミノジオール二核配位子を用いると,Ti触媒によるアルキル化反応において触媒サイクル促進のために必要な過剰のTi(O^iPr)_4を添加することなく,最高収率70%で生成物が得られた.
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