2005 Fiscal Year Annual Research Report
金属単原子ワイヤーの安定形成と電子・スピン伝導スイッチング機能の賦与
Project/Area Number |
17750116
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木口 学 北海道大学, 大学院・理学研究科, 講師 (70313020)
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Keywords | 金属ナノ結合 / 量子化コンダクタンス / 電気化学 |
Research Abstract |
今年度は溶液内において金属ナノ接合を電気化学STMを用いて作製した。主にAuナノ接合の電気化学電位による構造制御、Fe, Co,Ni,Pd遷移金属ナノ接合の安定形成について研究をおこなった。 Auのナノ接合の電気化学電位を正に保持すると真空中や大気中と同じく伝導度がGoで量子化される伝導特性が観測された。電位を負にするとこれら整数コンダクタンスに加え、新たに分数コンダクタンス値が発現した。この分数コンダクタンス値の起源を明らかにするために溶液のpHを変化させた実験をおこなった。その結果、Auへの吸着水素が分数コンダクタンス値を示す構造を特異的に安定化させることを明らかにした。この構造の安定性は電気化学電位により可逆的に制御することが可能であった。さらに金単原子ワイヤーの安定性の電気化学電位依存性を測定した。その結果、-200mV vs. Ag/AgClで原子ワイヤーが最も不安定となり、その正側でも負側でも原子ワイヤーは安定化されることが分かった。正側ではアニオンが負側では水素がワイヤーに吸着することにより安定化するものと考えられる。そして、原子ワイヤーの安定性は電気化学電位により可逆的かつ連続的に制御可能であった。 また電気化学電位制御下でFe, Co, Ni, Pd遷移金属のナノ接合についても検討をおこなった。その結果、水素発生条件のもとで超高真空、極低温と同様の量子化伝導を観測することに成功した。従来、室温ではこれら遷移金属の量子化伝導を測定した例は少なく、溶液内室温でナノ接合を安定化した意義は大きい。溶液内水素条件では擬似的に超高真空、極低温と同じような環境が実現したものと考えている。特にNi, Pdの場合は単原子ワイヤー形成を示唆する結果が得られた。金属の単原子ワイヤーはこれまでAu, Pt, Irなど一部の金属に限られ、遷移金属の単原子ナノワイヤー作製に成功した例はない。本研究の結果は、溶液内が新たなナノ構造形成の場となりうる事を示唆している。
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Research Products
(6 results)