2005 Fiscal Year Annual Research Report
伝導性電荷移動錯体の電荷秩序相における非調和分子振動と二次非線形光学特性
Project/Area Number |
17750139
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山本 薫 分子科学研究所, 分子集団研究系, 助手 (90321603)
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Keywords | 有機伝導体 / 電荷秩序 / 強相関 / 強誘電性 / SHG / 非線形光学 / ドメイン / 金属-絶縁体転移 |
Research Abstract |
研究代表者は,電荷秩序(CO)を示す電荷移動錯体のうち,一部の物質が二次の非線形光学特性を示すと予想した。本研究はその検証を行いつつ,さらにCOに関連した強相関物質独自の光機能性を探求することを目的としている。研究計画初年度の本年度において,α-(BEDT-TTF)_2I_3錯体が電荷秩序転移に伴い二次非線形光学特性を示すことを第二高調波発生法により確認した。これまで莫大な研究報告がなされてきた伝導性の電荷移動錯体で二次非線形光学特性の確認は初めてであり,この結果は関連物質の新機能の提案として極めて重要と考える。また,薄膜状に成長したα-(BEDT-TTF)_2I_3錯体の単結晶を用いることで,実践的なデバイス形態に近い条件で高効率な測定を可能にしたことも,今後の研究展開に大いに寄与する成果である。年度後半において非線形電気感受率の波長分散を測定し,その値が半導体およびファイバーレーザーの発振波長においてBBO等の既存の非線形光学結晶を凌駕することを示し,現在論文発表準備中である。一方,二次非線形性発現の機構を理解するために,エルビウムドープファイバーレーザーを採用したSHG顕微鏡の開発を始めた。観測した二次非線形性は電荷秩序によって結晶に強誘電的な自発分極が発生したことに帰着されると考えている。強誘電転移では,結晶学的に等価な異なる分極方位の相が縮退して現れるために,ドメイン構造が発生する。開発中の装置を用い,このような強誘電ドメイン構造の観測を試みる。
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