2006 Fiscal Year Annual Research Report
伝導性電荷移動錯体の電荷秩序相における非調和分子振動と二次非線形光学特性
Project/Area Number |
17750139
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山本 薫 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (90321603)
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Keywords | 有機伝導体 / 電荷秩序 / 強相関 / 強誘電性 / SHG / 非線形光学 |
Research Abstract |
本研究では,ウィグナー型の電荷秩序(CO)を示す電荷移動錯体α-(BEDT-TTF)2I3が,COの発生により代表的な二次のNLOである光学第二高調波発生(SHG)を示すことを明らかにした。NLOの大きさを規定している非線形感受率の決定を行ったところ,その大きさはBBO等の既存の非線形光学結晶を凌駕していることが明らかになった。これは,COで発生する極端に不均一な電荷分布が,荷電子のポテンシャルエネルギーに大きな非調和性を発生させるためと考えられる。偶数次のNLOの発生は反転非対称性な物質にのみ許され,大きな非調和ポテンシャルの発現は,強い分極の発現を意味している。相転移に伴う分極発生は分極状態と無分極状態とが拮抗するために実現されたと考えられる。このような自発分極発生は,極めて広範な機能性で知られる強誘電体で観測される現象であり,α-(BEDT-TTF)2I3にも類似の物理特性が発現する可能性があり,基礎および応用の両面から注目される。今回発見した自発分極現象で重視すべき点は,従来の強誘電体における分極発生が結晶中のイオン変位に起因するのに対し,ここでの分極は電子相関による電子相転移によって引き起こされている点にある。このことに注目して本研究では分極相をフェムト秒パルスレーザーで励起し,SHGの時間応答を調べることで自発分極の外場応答を調べた。その結果,分極はレーザーパルスにより瞬時に消滅し,ピコ秒オーダーという短い時間で回復するという極めて高速な変化を示すことが確認された。
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