2005 Fiscal Year Annual Research Report
高分子のシシケバブ構造形成過程の中性子散乱を用いた観察
Project/Area Number |
17750203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松葉 豪 京都大学, 化学研究所, 助手 (10378854)
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Keywords | 中性子散乱 / シシカバブ構造 / 高分子結晶化 / 構造形成 |
Research Abstract |
本実験に必要な中性子散乱装置に設置可能なせん断流動セルを京都大学化学研究所の金谷教授および西田助教授の協力で製作した。予備的実験を東京大学物性研究所のSANS-U分光器に設置して行った。作成したサンプルセルの大きさは厚み0.5mmで、必要なサンプル量は4cm^3とごく少量のサンプルでも実験が可能となった。重水素化高分子は非常に希少であり、また高価であるため、ごく少量でも実験が可能になったというのは非常にメリットが大きい。また、最大引っ張り荷重は3.5Nmであり、高分子融体のような非常に粘い試料でも測定をすることが可能となった。温度制御に関しては、室温〜200Cにおいて±0.3℃以下の安定性を示し、高分子の結晶過程の観察に対する可能性を示した。また、最大せん断速度・ひずみ量はそれぞれ160s^<-1>および10000%であった。高分子融体にせん断を印加し結晶化過程を観測すると、シシカバブ構造や配向構造が観測された。 また、超高分子量/低分子量ポリエチレンブレンドの流動場における結晶過程を小角X線散乱および光散乱、顕微鏡観察法を用いて観察を行った。この実験では、特に結晶化温度と超高分子量成分の濃度の依存性に着目した。配向構造が観測される超高分子量成分濃度(臨界濃度)が結晶化温度が大きくなるにつれて極端に大きくなることを示した。流動場における構造形成過程が配向した高分子鎖はランダムコイルに戻ろうとする緩和速度と結晶化速度の相関により決定されるが、融点直下における構造形成過程においては、結晶化温度に大きく依存していることを明らかにした。また、臨界濃度の結晶化温度依存性を詳細に解析するとある結晶化温度以下では臨界濃度が0.2wt%とほぼ一定になった。この濃度は超高分子量高分子の絡み合い濃度(0.18wt%)とほぼ一致しており、超高分子量成分の絡み合いが構造形成に不可欠であることを示した。
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Research Products
(1 results)