Research Abstract |
生体適合性高分子フィルムにタンパク質が吸着する過程を時間分解赤外観察するために,独自のin-situ ATR-IR測定セルを作製した.自作セルを用いて,生体適合性に優れた高分子であるpoly(2-methoxyethyl acrylate)(PMEA)に,水,アミノ酸,タンパク質などが吸着する過程の全反射赤外スペクトルを時間分解測定した.また,得られた時間分解スペクトルを解析するために,摂動相関ムービングウィンドウ二次元相関分光法(PCMW2D法)を新に提案した. PMEAに吸着する水は,不凍水,中間水,自由水の異なる吸着構造を持つことが知られており,それぞれの水和構造を,得られた時間分解赤外スペクトルから議論した. in-situ ATR-IRセル中においてPMEAに接した水をアミノ酸水溶液に置換すると,アミノ酸は水の構造を変え,PMEAはその影響を受けて膨潤,或いは収縮することがわかった.また,アミノ酸のような低分子の場合,アミノ酸は吸着に伴いPMEAバルク内部に侵入できることがわかった. 低分子の場合とは逆に,タンパク質をPMEA吸着させると,タンパク質はその嵩高い構造から,PMEAバルク内部に侵入することができず,表面吸着に留まることがわかった.また,タンパク質のアミド基に由来する赤外バンドは,吸着時間と共にバンド形状を変え,吸着に伴う変性過程を実時間で捉えることができた. 水,アミノ酸,タンパク質,それぞれの吸着過程における時間分解赤外スペクトルをPCMW2D法によって解析することで,官能基レベルの分子相互作用と分子構造変化を議論することができた.
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