Research Abstract |
動的システムの解析において,行列束のKronecker標準形の計算が必要となる.行列束のKronecker標準形は,冪零指数,行指数,列指数,の3種類の構造指数によって特徴付けられる.しかし,構造指数は,摂動に対して不安定な離散値をとるため,正確に計算するには,誤差に対してロバストな手法が不可欠となる.本研究課題は,行列束の零非零構造に注目し,数値誤差の生じ得ない組合せ的な手法を積極的に活用することで,構造指数を精密に計算する手法の開発を目的としている. 行列束の冪零指数に関しては,組合せ緩和法を用いて小行列式の最大次数を計算する方法が確立されている.本研究課題では,行指数・列指数を計算する組合せ緩和算法の開発に取り組んでいる.これまでに知られていた行指数,列指数の組合せ的な推定値を効率的に計算する手法に関する詳細な検討の結果,各非零要素が代数的に独立であるという仮定の下で,行指数,列指数のそれぞれの総和が組合せ的な推定値に常に等しいことが明らかになった.一方で,個々の行指数,列指数については,代数的独立性の仮定の下でも,推定値が真値と異なる例が知られている. 関連研究として,行列束のKronecker標準形が得られる仕組みのマトロイド理論による抽象化にも成功している.この結果が,本研究課題のような数値計算の目的にどのように結び付けられるか,非常に興味深い.
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