Research Abstract |
本研究の目的は,X線回折援用引張試験法によりマイクロマシン実装に用いられるAu-Sn共晶はんだ薄膜材料の力学特性評価を行うことである. 当申請研究の初年度にあたる平成17年度では,これまで試作してきた薄膜用引張試験装置の改良を行った.具体的な改良点は,1)室温〜300℃程度で試験を行うことができるように試験片固定冶具にヒーターを設置,2)PZTアクチュエータの近傍に水冷式冷却冶具を設置,の2点である.装置開発・改良に際しては,変位増幅機構を有するアクチュエータケースに超小型1軸PZTアクチュエータを収納することで,装置の小型化,軽量化を図っている.加熱冶具の設置に際し,アクチュエータケースの再設計を当研究機関既存の汎用有限要素プログラム:ANSYSを用いて実施した.ここでは,変形部の応力が使用材料(Al7075T6)の降伏応力の1/5以下となるようにケース全体の寸法・形状を決定した. 引張試験装置の改良と平行して,Au-Sn薄膜成膜用のスパッタ装置を設計・開発した.この際留意した点は,1)2源以上のスパッタソースガンを有すること,2)出来るだけ広範囲に均質の膜を成膜可能なこと,3)試料基板が回転し,かつ,500℃程度までの温度調節が可能なこと,4)真空槽の容積を抑えること,である.製作したスパッタ装置は2インチのマグネトロン式ガンを3基搭載しており,基板回転・加熱を行うこともできる.また,真空槽を小さく設計したために,1×10^<-5>Torr以下の高真空状態まで2時間程度で到達できる. 上記スパッタリング装置で成膜した80%Au-20%Sn薄膜の力学特性を調べるため,まず試験片製作で必要なAu-Sn薄膜のエッチング条件について調べた.その結果,通常の酸・アルカリ溶液ではAu-Sn薄膜を成形することが困難であったため,本研究ではリフトオフにより試験片形状の加工を実施した.Au-Sn薄膜試験片の応力-歪み曲線は室温では線形を示し,塑性変形することなく脆性的に破断した.一方,試験温度を50℃以上にした場合,塑性変形を生じた.ヤング率・ポアソン比は55GPaおよび0.3を示し,バルク材のそれより10%程度低い値を示した.
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