Research Abstract |
リニアモータ駆動の送り系と静圧案内を持つ高精密マシニングセンタを主な対象として,加工中の送り速度などの加工条件を,オペレータの経験と加工中の修正に頼ることなく,自律的に最適化するシステムを実機上に構築することを研究目的とする.特に本年度は,加工状態を知るための重要な情報である,切削抵抗を特別なセンサなどを用いることなく,NC工作機械が従来持つ内部センサのみを使うことによって推定する手法を構築し,それを実機上に実装する研究を行った.提案した切削抵抗モニタリングシステムをリニアモータ駆動,及び静圧案内を持つ高精密加工機,及びボールねじ駆動,転がり案内を持つ従来型の汎用加工機の双方に実装し,両者における切削抵抗モニタリングの精度を比較した. 具体的には,特にボールネジとナットの間,及び転がり・すべり案内の摺動面に作用する摩擦が,切削抵抗のモニタリング精度に対して及ぼす影響を定量的に評価し,それらをリニアモータ駆動の場合,及び静圧案内の場合と比較した.その結果,ボールネジ駆動の送り系と転がり案内を持つ加工機では,摺動面に作用する摩擦力の影響がサーボモータの電機子に大きな影響を及ぼし,かつその大きさは運動条件などによって大きく変動するため,200N以下の切削抵抗を,サーボモータの電機子電流から推定することは困難であると結論づけた.一方,リニアモータ駆動,及び静圧案内を持つ高精密加工機では,摺動面の摩擦は非常に小さく,推定誤差10N程度でモータ電機子電流から切削抵抗を推定することを示した. 今後は,加工状態のモニタリングを基礎として,切削抵抗制御を基礎とした加工条件制御システムを構築,実機への実装を行う.また,工具パスの最適化など,エンドミル加工の高精度化・高能率化に関連する技術について研究を行う.
|