2005 Fiscal Year Annual Research Report
カオスに基づくスペクトル拡散符号を用いたマルチユーザ同期捕捉
Project/Area Number |
17760312
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
實松 豊 九州大学, 大学院システム情報科学研究院, 助手 (60336063)
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Keywords | スペクトル拡散通信 / CDMA / 擬似乱数系列 / 同期捕捉 / マルコフ連鎖 / カオス力学系 / チップ波形 / ニューラルネットワーク |
Research Abstract |
長周期かつ大量な擬似乱数の生成は,暗号分野はもとよりCDMAなどの商用無線通信工学の分野でも極めて重要である.擬似乱数の生成法には様々あるが,単純な力学系から生成されるにもかかわらず極めて複雑な振る舞いをするカオス現象は有望な手法と考えられる.特に,CDMAの分野では90年代初頭にカオスに基づく擬似乱数系列が従来利用されているシフトレジスタ系列よりもユーザ数にして約15%優れた性能を持つことがイタリアの研究者らによって示されて以来,注目されている. CDMAの受信方式は,事前情報の前提により2つに大別できる.割り当てられた一人分の擬似乱数しか利用できないシングルユーザ受信と,同時利用者すべての擬似乱数を利用できるマルチユーザ受信(MUD)である.受信器が送信された信号とタイミングを取ることを同期捕捉と呼ぶが、MUD技術を利用すれば従来よりも多くのユーザを許容することができる反面、同期捕捉がさらに難しくなる。研究代表者らは、MUDの一つである干渉除去法を用いた同期捕捉を提案し、すでにいくつかの結果を得ている。本年度は,まず同期捕捉に関するこれまでの結果をまとめた論文が英文論文誌に受理・掲載された.また,MUD受信器がニューラルネットワークにおける連想記憶モデルの動作原理と同一であり,MUD受信器と従来の相関受信器の構造が,連想記憶における係数重みの決定法(相関型・直交射影型)に対応していることを示した.さらに,非同期CDMAから導かれるニューラルネットワークを提案し,このネットワークがまったくランダムなパターンよりも,マルコフ連鎖をなすパターンを記憶しやすいことを示した.また,非同期CDMA通信の誤り率特性が,擬似乱数である拡散符号とチップ波形の2者に依存することを指摘した.これは,同期CDMA通信とは大きく異なる特徴である.すなわち,最適な拡散符号はチップ波形の設計に深く関係し,前述のイタリアの研究者によるマルコフ符号は,チップ波形が矩形の場合に限られる.一方,理想帯域制限フィルタを用いる場合は,独立同分布(independent and identically distribnted)2値系列が最適となる.以上の結果を査読付き国際会議で公表した.
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