Research Abstract |
本年度の目標は,偏心が十分小さく,試験した供試体の80%以上が試験区間内で破断する試験方法を確立することであった。これについては,現段階において十分達成させていないと判断する。一方,本年度の研究を通じて判明した知見も多い。これらを以下にまとめる。 (1)本年度開発した直接引張試験方法の特徴は大きく2ある。1つは載荷当初からの荷重の偏心を消去できる簡易な載荷治具を開発したこと,もう1つは荷重伝達の手段を従来のボルト埋込式から接着剤式に変更することにより供試体作製を簡易化したことである。 (2)開発した載荷治具を用いた偏心消去作業により,載荷当初から供試体に生じる偏心を容易に消去することができた。ただし、一度きりの偏心消去作業だと,その後再び偏心が生じる可能性がある。完全に偏心を消去しようとすれば,載荷初期の段階において2,3回程度の偏心消去作業を行う必要がある。 (3)荷重伝達方法を接着剤法に変えたことにより,供試体型枠や載荷治具を大幅に簡素化でき,一度に多数本の供試体を作製できるようになった。しかしながら,供試体の破断性状は良好ではなく,供試体は試験区間内で破断する以前に,接着剤との界面で破断する結果が多く観察された。この原因は,接着剤の接着力不足によるもの,あるいは接着界面のコンクリートの剥離によるものであり,荷重伝達手段を接着剤法にすることの限界が明らかになった。 (4)以上の成果を学会で公表したところ,現状の接着剤法では困難であろうとのコメントを得た。また,供試体が円柱形だと,骨材の下面にブリーディングによる欠陥が生じ,それが引張強度に影響を及ぼすので,直接引張試験には不適とのコメントも得た。これらの指摘を受け,来年度は,荷重伝達手段をボルト埋込法にする,円柱供試体を横打ちで作製する,偏心の消去方法は接続する,等の改善を行い,目標とする試験方法の確立を目指す。
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