Research Abstract |
平成17年度は,湖沼・貯水池等の閉鎖性水域において,水域底部に堆積した底泥による溶存酸素(DO)消費過程について検討を行った.すなわち,底泥直上の水柱から底泥表面へと移動するDOのフラックス(SOD:Sedimentary Oxygen Demand)推定のための数理モデルを構築し,微小酸素電極による実験結果との比較を行い,モデルの妥当性を検証した.このモデルは(1)底泥直上の水柱,および底泥内部での物質移動,(2)底泥内部での微生物過程によって構成される.まず,(1)に関して,底泥直上の濃度境界層での物質移動は水理条件(水流流速)の影響を受けることが知られているが,これについては申請者が従来より検討を行っている境界層モデルを用いる.一方,底泥内部での物質移動に関しては,現時点では未解明であるので,次のような検討を行った.すなわち,底泥を高粘性の流体と考え,運動量の輸送と物質移動のアナロジーを仮定して,底泥内部での分子拡散による物質移動に及ぼす底泥直上の乱れの影響について,数値実験を実施した.その結果,周期の短い(高周波)成分ほど,また,底泥の粘度が高いほど乱れは底泥内部で急速に減衰することがわかった.これより,底泥内部での物質移動に及ぼす乱れの影響に関しては,底泥表面近傍のみが重要であり,界面から十分離れた底泥内部では物質移動に及ぼす乱れの影響は僅かであることを確かめた.次に,(2)に関して,特に従属栄養細菌による好気性状態での有機物質の酸化とそれに伴う溶存酸素消費過程に着目して,酸素消費速度を微生物増殖速度の関数として定式化した.これら,すなわち,(1)境界層モデル,および(2)微生物増殖過程のモデルを対応させて,湖沼や貯水池の水・底泥境界面近傍での溶存酸素濃度分布,および溶存酸素のフラックス(SOD)を推定のためのモデルを構築した.本モデルにより推定された水・底泥境界面近傍での溶存酸素濃度分布と微小酸素電極による実測値とを比較したところ,モデルによる推定値は実験結果を良好に再現し,これより,モデルの妥当性が示された.
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