Research Abstract |
平成19年度は,前年度までと同様に野外調査として,南大東島で繁殖するモズを捕獲,計測,採血,繁殖状況の追跡を行った。室内実験として,CHD遺伝子を用いたヒナの性判別,およびマイクロサテライトDNAを用いた親子判定,つがい間の血縁度の算出を行った。巣内雛の性比を体重の順位にしたがって解析した結果,雄雛の割合で表す性比は,0.47-1.57までの変異が認められた。巣内で最も軽い雛が雌に偏る可能性があったが,さらに標本数を増加させて検討する必要がある。父性の判定の結果,南大東島のモズ個体群では,つがい外受精が生じていることがわかった。つがい外受精は,合計62巣中10巣で確認され,その頻度は16%となった。鳥類におけるつがいが受精の確率は5%未満のことが多く,南大東島のつがいが受精率は比較的高い。また,雛レベルでのつがい外受精率は8%で全253巣中21個体が,社会的つがい以外の雄によって受精されたものであった。このような比較的高いつがい外受精率は,南大東島のような隔離された海洋島の特徴であろう。同時進行したダイトウコノハズクの研究は,つがい外受精でできた仔のヘテロ接合度は,つがいの受精による仔よりも高いことがわかった。隔離された狭い血縁個体が多くなる環境下では,つがい外交尾(受精)が適応的な行動と推察された。このためモズも比較的高いっがい外受精率を示したものと思われる。また,他地域におけるモズの孵化率は90%以上が通常であるが,南大東島では60%と極めて低く,個体間でも大きくばらついた。南大東島のモズの遺伝構造は単純で,対立遺伝子数が少なくつがいが血縁個体なった結果と結論された。
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