2005 Fiscal Year Annual Research Report
クマ科動物の適応放散と四肢の機能形態学的多様性に関する研究
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17770064
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
佐々木 基樹 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (50332482)
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Keywords | 機能形態学 / 画像解析 / 解剖学 |
Research Abstract |
本年度、ジャイアントパンダ、マレーグマ、ホッキョクグマ、そしてヒグマの後肢足根部位のCT撮影をおこなった。CT撮影には、右後肢を用いた。脛骨長軸と足底面が垂直な状態、および、その位置から足を可能な限り回外させた状態の2通りの条件で足根関節部位のCTスキャン撮影を行った。さらに、得られたCT画像データを三次元立体構築して、足根関節の可動状況を観察した。また、肉眼解剖によって、後肢構成筋の形態学的違いを検索した。肉眼解剖の結果では、ジャイアントパンダとマレーグマの前脛骨筋は全体的に豊富な筋質を持ち、短い腱で第一中足骨底外側端に終止していた。さらに、膝窩筋の付着部位は、脛骨の近位2/3にも及んでいた。一方、ホッキョクグマやヒグマでは、前脛骨筋の筋質は脛骨近位端から遠位端へと収束し、長い腱によって第一中足骨底外側端に終止していた。また、膝窩筋の付着部位は、ジャイアントパンダやマレーグマと比べて脛骨のより近位に終止していた。CT画像の観察の結果は、ジャイアントパンダでは、距踵中心関節において距骨頭の舟状骨関節面を中心足根骨が大きく回転し、さらには、踵第四関節において第四足根骨が、踵骨の立方骨関節面を内腹側方向にスライドしていた。その結果として足の内側縁が著しく挙上し足底が内側方向を向いていた。この足根関節の動きはジャイアントパンダに比べてマレーグマでより顕著であったが、ホッキョクグマやヒグマではこの関節の動きは小さかった。これらの結果から、ジャイアントパンダとマレーグマにおける前脛骨筋の発達と短い腱による第一中足骨への終止、そして足根関節の広い可動領域は、木登りに必要な力強いそして安定した足の背側への屈曲と回外を可能にすると推察される。さらに、膝窩筋のより脛骨遠位端への付着は、樹上生活に適応した効率良い下腿の内側への回旋と膝関節の屈曲を可能にしていると考えられる。
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