2006 Fiscal Year Annual Research Report
心筋細胞におけるアンジオテンシンIIタイプ2受容体の役割の解明
Project/Area Number |
17790480
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中山 雅晴 東北大学, 病院, 講師 (40375085)
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Keywords | 心筋 / アンジオテンシンII / 心不全 / カルシウム |
Research Abstract |
アンジオテンシンII受容体タイプ2(AT2)の機能はタイプ1受容体(AT1)に比し不明な点も多く,特に心筋細胞における機能はほとんど明らかでない。AT2ノックアウトマウスを用いた実験では,大動脈の結紮やアンジオテンシン負荷で心不全が惹起されず,AT2は心肥大形成に必須という報告がある一方,心筋梗塞後の心室リモデリングがAT2ノックアウトマウスで進行しやすくその予後は不良であることからAT2は心保護作用に働くという全く相反する報告もある。我々は心室におけるAT2の働きに着目し,心室筋特異的AT2過剰発現マウスを作成し、比較的低レベルの過剰発現を示すものと高レベル過剰発現を示すものとを比較することによりAT2が心筋細胞において発現量依存的に心不全を増悪させることを見いだした。本研究ではさらに、マウスの心筋を単離し、カルシウム感受性蛍光色素fluo3を細胞内に取り込ませることによって収縮に伴うカルシウム濃度の変化を細胞長の変化とともに計測した。結果、心室筋特異的AT2過剰発現マウスの心筋レベルにおいてカルシウム動態の異常を伴った収縮能の低下を観察した。しかもそれはAT2の発現量に依存していながら、AT2を介した直接作用でなく,AT1の作用を阻害するという間接的な反応であった。AT2はAT1とヘテロダイマーを形成して,AT2の薬理学的作用とは無関係にAT1の働きを阻害するという報告があり,我々の結果もこれに矛盾しない。実際、心筋細胞においてAT1,AT2の共染色を行い、AT1とAT2.との心筋細胞におけるco-localizationを観察した。さらに、収縮能に影響を与える因子としてpHがあるが、細胞における主たる寄与因子であるNa-H exchangerの働きも心室筋特異的AT2過剰発現マウスの心筋細胞において阻害されていた。従って、AT2はカルシウム動態およびpH調節のいずれにも働いて、心筋の収縮力それ自体を障害していることが、本研究により明らかになった。
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