Research Abstract |
【目的】Cyclooxygenase(COX)-2は炎症反応発現に関与し,虚血再灌流障害等で誘発された反応の進行,悪化に関与することが知られている.我々は,長時間保存後の移植心機能に対するCOX-2抑制の効果について検討した. 【対象及び方法】10-15kgの雑種成犬を用いた.全身麻酔・気管内挿管下に右開胸を行い,ドナー犬の心機能(心拍出量:CO,左室圧:LVP,左室圧一次微分値:LVdp/dt)を測定した後,4℃のGIK液で心停止を得た.続いて4℃のUniversity of Wisconsin (UW)液で冠血管床をwashoutした後にドナー心を摘出し,4℃のUW液を用いて12時問の単純浸漬保存を行った.対象をFK群(FK3311:選択的COX-2抑制剤,3mg/kgを再灌流前に静脈内投与,n=5)とコントロール群(再灌流前に生食投与,n=5)の2群に分け,保存終了後,体外循環補助下に同所性心移植を行い,再灌流1時間後に体外循環を離脱した.再灌流3時間後(体外循環離脱2時問後),中心静脈圧10mmHg, DOA5μg/kg/minの条件下にCO, LVT, LVdp/dtを測定し,ドナー心摘出前値に対する再灌流3時間後の循環動態の変化率を2群問で比較した.さらに測定終了後,左室心筋を採取し,COX-2の免疫染色の結果を2群間で比較検討した. 【結果】COと±LVdp/dtの変化率はFK群がコントロール群に比較して有意に(pく0.05)良好であった(それぞれCO:93±6% vs 66±4%, LVdp/dt:125±8% vs 77±10%, and-LVdp/dt:81±7% vs 52±6%).LVPの回復率には有意差を認めなかったが,FK群が高い傾向であった(90±5% vs 72±5%).COX-2の免疫染色では,FR群におけるCOX-2の発現はコントロール群に比較して著明に抑制されていた. 【結語】選択的COX-2抑制剤を投与された群の循環動態は,コントロール群に比較して有意に良好であった.このことから,再灌流時におけるCOX-2抑制は長時間保存後の移植心機能を改善すると考えられた. さらに現在,虚血再灌流傷害に対するヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(human atrial natriuretic peptide, hNAP)の有効性,およびポリミキシンB固定化カラムの体外循環使用時の炎症反応抑制効果に関して研究を行い,臓器移植への応用を検討している.
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