2017 Fiscal Year Annual Research Report
植物を利用した農業環境における有機汚染物質の高感度モニタリング技術の開発
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17F17748
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
乾 秀之 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (90314509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
STOYKOVA PETYA 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 環境モニタリング / ポリ塩化ビフェニル / 内分泌撹乱化学物質 / メジャーラテックスライクプロテイン / 組換え植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)組換え植物を用いた汚染物質のモニタリング ダイオキシン類と結合することにより標的遺伝子を転写活性化するマウス由来アリルハイドロカーボン受容体(AhR)、AhRが結合するプロモーター領域により発現制御されるレポーター遺伝子(ベータ-グルクロニダーゼ、GUS)を導入した組換えタバコに、ウリ科植物でポリ塩化ビフェニル(PCB)等脂溶性汚染物質の体内輸送に関わっているメジャーラテックスライクプロテイン(MLP)をさらに導入した二重組換えタバコのホモ系統を取得した。MLPとして3種MLP-PG1、MLP-GR1、MLP-GR3をそれぞれ導入した。これら組換え植物を、PCBの一種で最もダイオキシン様毒性の高いCB126(3,3’4,4’,5-ペンタクロロビフェニル)を含む寒天培地で2週間栽培し、葉や茎を含む地上部のGUS活性を測定したところ、いずれのMLPの導入でもMLPを導入していない植物に比べ高いGUS活性を示すことが判明した。 一方、17ベータ-エストラジオールなどの内分泌撹乱化学物質と結合するヒト並びにメダカ由来エストロジェン受容体(ER)と活性化したERが結合するプロモーター領域により発現制御されるレポーター遺伝子(緑色蛍光タンパク質、GFP)を導入した組換えシロイヌナズナについて、ホモ系統を取得した。ERは本来含まれるDNA結合ドメイン、転写活性化ドメインを、大腸菌やウイルス由来のものと置換することにより、より転写活性化性能が高くなることを期待して複数種作製し、シロイヌナズナに導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)組換え植物を用いた汚染物質のモニタリング ウリ科植物においてPCBなどの脂溶性の極めて高い汚染物質の体内輸送に関係しているMLPを導入した二重組換えタバコは、MLPを導入していない組換えタバコよりもGUS活性が高く、これはMLP導入タバコがPCBをより多く地上部に蓄積していることを示し、MLPの導入がモニタリング感度の向上に役立つことを示している。 また、ERを導入したシロイヌナズナのホモ系統を選抜できたことから、各種内分泌撹乱化学物質のモニタリング感度の評価を行うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
(2)MLPを追加導入した組換え植物による汚染物質の高感度モニタリング・・・AhRとMLPを導入した二重組換えタバコを各種PCBを含む寒天培地において栽培し、GUS活性を測定する。これにより、PCBのモニタリング感度を評価する。さらに、PCB人工汚染土壌を作製し、組換えタバコを栽培することによりモニタリング感度を評価する。また、4-t-オクチルフェノールや17ベータ-エストラジオール、ビスフェノールAなどの内分泌撹乱化学物質を含む寒天培地においてERを導入した組換えシロイヌナズナを栽培し、そのモニタリング感度を評価する。さらに、内分泌撹乱化学物質の実際の汚染状況を考えて水耕栽培によるモニタリング感度を評価する。 (3)ウリ科植物の組換え効率の向上・・・高脂溶性・難分解性の有機汚染物質の取り込み能力が極めて高いウリ科植物キュウリ、カボチャに対して、AhRやERとレポーター遺伝子を導入すれば高感度な汚染物質モニタリングが可能となるのに加え、それらの輸送に関連するMLPを導入することにより環境浄化にも利用することができる。しかし、ウリ科植物の組換え植物は困難であることから、組換え効率の向上のための条件(アグロバクテリウムの感染・再分化・選抜方法など)を検討する。
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