2017 Fiscal Year Annual Research Report
豊かな書き手を育てる英語授業に必要なダイアログの研究
Project/Area Number |
17H00051
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
塩川 史 奈良女子大学, 附属中等教育学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | 英語教育 / 対話 / 学校文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究者の研究により、フィンランドと日本の英語学習者の英語ライティング・プロダクトを比較すると日本の学習者は回避・L1に依存するストラテジーを取り、内容が画一的であることがわかった。これらは教室内の英語での対話に依拠するのではないかと考え、タンペレ大学附属中等教育学校(フィンランド)において7年生および9年生の英語授業を観察し、本研究者が授業を行うとともに、日本の中学校・高等学校における先進的な英語教育の現場も観察し、双方の比較を試みた。 英語を用いて行われる授業で使用されることばは、L1と比較すると表層的で単純化された情報になりがちであり、対話が参加的な開放性を持つと、アクティブには見えるが深い思考を生む真の対話が成立しない。教室の文化は、そこにいる教員と生徒のやりとりによるダイナミズムから生まれ、教員の発話が教室内の学習文化に影響するのだが、日本での授業は、英語でのやりとりが自己目的化しており、教員が学習内容の「筋」にこだわり、筋に沿って生徒に参加を呼びかけコントロールする形での「対話」が行われており、生徒は、教師の考えた「筋」から逸れぬよう、「正解」を求めて授業に「参加」していた。対してフィンランドでは、授業への参加が大前提にあり、参加を呼びかける「指示」や「情報」以外の「ことば」があふれ、自らの思いを聴き合い語り合う場面が多く見られた。短期間の観察・授業でもわかるほど生徒の個性が授業に出ており、ほぼ全員が生徒らしく振舞っていた日本の生徒とは対照的であった。フォームの習得をめざす英語授業であり、EFLのテキストに沿い、習得を図るためのドリルも行われていた。課題は探究的なものばかりではなかったのだが、自己と他者への関心を重視する教師の発話から引き出される対話により作られた柔らかな教室文化に、学びの発展する可能性を感じた。ダイアログを生む教師の問いについて、研究を継続したい。
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