Outline of Annual Research Achievements |
日本学術会議の数理科学委員会による報告書は, 数理科学を使って現実世界の問題を解く場合に, モデルを作ることや問題を定式化すること等を挙げている。また, 高等学校次期学習指導要領の検討課題として, モデルの取り扱いを意識するモデリングの導入が提言されている。このような背景から, 本研究では, 高等学校数学科の授業の学習・指導の方法として, 数学的モデル化過程に着目した。また, 数学の事象として, 数理科学の一分野でも特に, 応用数理の中の離散数学に着目した。本研究の目的は, 高等学校数学科における離散数学のモデル化教材の開発を行うことである。 第一に, 諸外国の数学教科書に記載されているオイラーグラフを内容に取り上げた離散数学教材の分析を行った。そして, 本教材を基にパトロールを題材とするモデル化教材を作成した。 第二に, 理工系の私立大学生を対象に, 作成したモデル化教材を用いて実験授業を行った。その実際を, 7月に南アフリカで行われたICTMA18において報告した。 第三に, 清野(2015)における「仮定の意識化」の枠組みを視点に, 教材の考察を行った。考察の結果, 本教材は, 「仮定の意識化」における3つすべての仮定を意識化させることができることが確認できた。通常意識化されにくい「b. 数学的処理において意識化される仮定」を確認することができたことは, 本教材の教育的意義が豊富であることを示している。上記の研究成果を, 11月に愛知教育大学で行われた日本数学教育学会第50回秋期研究大会において報告した。 第四に, 問題設定に焦点をあて, 本教材の分析を行った。その結果, ある仮定を設定すると, 本教材が最短経路問題に帰着される場合があることがわかった。上記の研究成果を, 12月にラオスで行われた第6回数学理科教育国際会議において報告した。
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