Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 数学的な表現の主体的な活用を促す指導の実践の蓄積をもとに, 「表現の移行のきっかけ」を検討することである. 研究の方法は, 普段の数学の授業のデータの蓄積から「表現の移行のきっかけ」を提案し, 理論的な考察でさらに深めた. 本研究の意義は, 主体的にかくことができる生徒が増えることが期待され, 「数学的な考え方」「関心・意欲・態度」の改善に寄与できる. 生徒の主体的な学びは豊かな学びに繋がる. 研究では, 2人の先生の, 中学校と高校の数学の授業のデータを収集した. 授業では, 「問い→多様な表現の活用による試行錯誤→問題解決→真実感を得る」という生徒の傾向があった. 試行錯誤の過程では, ①図的表現の使用, ②多様な表現の自由な使用(活用), ③わかる環境の整備, ④かくことの楽しさ, よさ, ⑤双原因感覚をもち, 相互教授による学び, そして, ①~⑤により⑥真実感の獲得をしていた. また, 生徒の問題解決活動では, 主に使い慣れた表現や簡易な表現が表出していた. ただし, 分析の手法には課題があり, その改善の方向性をみいだした. 授業における表現の移行の傾向を受けて, 理論的な考察の結果, 「子どもが主体的にかくこと」「子どもの情意等に関すること」「数学的思考の対象と質を深化すること」が重要な視点であるが, 理論面と実践面でうまく3つの視点について関連付けて説明し, 表現の移行に関わる「かくことのコスト」をどのように克服するのか, さらには「真実感の概念規定の必要性」を今後検討すべき視点として挙げた. 研究の成果として, 表現の移行は, 生徒の探求的な活動においてなされることが傾向としてみられた. 一方で, 分析の手法について, 授業のデータの蓄積による生徒の表現活動の傾向から, 表現の移行を提案するにあたり, 分析シートの改善の方向性をみいだした. そして, 表現の移行を理論と実践から考察する際の視点を挙げることができた.
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