Outline of Annual Research Achievements |
中学2年生144名を対象として, 理科における質量保存の法則に関する学習で, 「知識検証学習モデル」による授業(A群 : 73名)と従来型の授業(B群 : 71名)をそれぞれ2単位時間ずつ行い, 学習モデルの違いが授業で行う実験に対する情動や意欲に与える影響について調べた。実験に対して, 楽しかった(楽しさ), 結果に驚きを感じたか(驚き), 積極的にとり組めたか(積極性), 実験の目的と実験結果の関係を理解できたか(理解の感覚)の4項目について5件法で回答するアンケートを実験の直後に実施した。なお, 本研究では, 楽しさと驚きを情動, 積極性を意欲とした。 アンケートの各質問項目について, 群ごとに平均点と標準偏差を調べたところ, 楽しさや驚き, 積極性については群間で得点に有意な差はなかった。これらのことから, 学習モデルの違いは実験に対する情動や意欲に影響を与えないことを示唆しており, 実験結果を予想し得る知識を教示し, それを実験で検証する過程においても楽しさや驚き, 積極性は抑制されないと言える。一方, 理解の感覚についてはA群の得点が有意に高かった(t(142)=3.89, p<.01)。これは, A群では, あらかじめ実験結果と実験の目的の関連を教示していたためと考えられる。 次に, 実験に対する理解の感覚と楽しさ, 驚き, 積極性の関連を調べた。学習モデル×理解の感覚×楽しさ, 学習モデル×理解の感覚×驚き, 学習モデル×理解の感覚×積極性について分散分析を行ったところ, 楽しさと積極性については理解の感覚の主効果のみが認められたが(F(2,138)>10.80, ps<.01), 驚きについてはいずれの主効果も交互作用も認められなかった。これらのことより, 実験の内容を理解できたという感覚が実験を楽しく感じさせたり, 積極的にとり組めたと思わせたりすることに影響したと考えられる。つまり, 実験に対する楽しさや積極性を高めるには, 実験を行う前にあらかじめ一定の知識を準備させることが必要であると言える。
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